よく来る客で、いつもイヤホンをしている男がいるんです。
たぶん音楽を聴いているんでしょうね。
買う商品を渡すと、もうマイワールドです。
別にいいんですよ。
この男が何をしていようとわたしに害がなければいいんです。
でもこの男。
わたしに害を及ぼします。
一番最初にヤツが来たのは1か月くらい前でしょうか。
あの時も音楽を聴いていました。
わたしはいらっしゃいませと挨拶してから、商品を通しはじめました。
しばらくして終って、聞きます。
「お買いもの袋はお持ちですか?」
「…」
…えっと、無視ですか?
見上げれば財布を探るヤツ。
もういちど尋ねます。
「お買いもの袋はお持ちですか?」
するとヤツは口で答えなかったものの、うなずきました。
なので、1%、お買い上げ金額から引きました。
(わたしの店はお買いもの袋を持参することで、割引されるんです。大した金額じゃないけど)
もちろん、スーパー袋はいれません。
ヤツはお金を払って、わたしの視界から消えていきました。
そしてわたしは次の客の商品を通しはじめました。
しばらくして、その客のスキャンが終わり、いざお会計へ。
レジに向き直ると、さっきの男が。
どうしたのだろうかと思えば、ヤツは言いました。
「袋」
はい?
お客サン、さっき頷いたじゃないですか。
なんて事は言えません。
わたしの見間違いかと思いましたが、ヤツは絶対に頷きました。
でも、きっと、彼はわたしの質問に答えて頷いたのでは無く、音楽を聴いて気分がノッてリズムをとっていたんでしょうね。
コノ野郎と思いつつも、ちゃんと確認しなかったわたしのミスでもあるので、仕方ありません。
渡しましたよ。
それからもちょくちょくヤツを見かけてはいたんですけど、わたしのレジに並ぶことはありませんでした。
それが、今日、ヤツはまたやってきたのです。
またイヤホンをして。
わたしは結構根に持つほうなので、以前のことを思いだし、手が震えながらもレジを通しました。
そして運命の段階へ。
「お買いもの袋はお持ちですか?」
「…」
またヤツは答えません。
微妙にリズムをとっています。
わたしのボルテージは上がります。
でも、また聞くのもバカらしく、今日は袋を入れました。
そしたらこの男、やっとイヤホンを外し、わたしに言います。
「袋、あるんだけど」
死ね!!!
無視してやろうかとも思いましたが、こっちは仕事なので、そんなことできません。
仕方なく、割引し、お金を回収しました。
もうね、イヤホンを外せ、と怒鳴りたくなりました。
この前の電話の人にしろ、人の話をちゃんと聞きなさい。
てか、レジに並んだとたんに携帯いじりだす人とか結構いるんですけど、アレ、はっきり言って迷惑なんです。
接客態度が悪くなっても仕方ないですよ。
文句があるなら、まず自分をどうにかしろという話です。
もう、今日の客はほんと来てほしくないですね。
てかね、リズムをとってる姿、痛くて寒気がしました。
カッコいいとか思ってるんですかね。
あー、もう、やる気がなくなるよ。
ほんとバイト変わりたい。
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